住職の日記

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コラム「真宗で終活!」第2回

2025.09.04

『ひとりふたり・・』(法蔵館発行)に2022年1月発行の161号より2024年9月発行の172号まで連載しておりました「真宗で終活!」をコラムとして掲載いたします。

 

『ひとりふたり・・』162号

「真宗で終活!」第2回

 

「仏教の終活ー仏の教えに尋ねるー」

 

 私がお寺で「終活」を考えたいと思った理由は、ここを地域コミュニティの場として開放したいという思いもありましたが、「終活」ということ全体が、かつては、日常的にお寺で語り合われていたことだと思っているからです。

 もう少し具体的にいうと、お寺という場所が、一人の人が「生きる」ことに深く関わっていたと思うのです。

 人は必ず、このいのちを終えます。生活上の不安はたくさんあり、そのことを相談し、解決すること、受け止めていくことはできますが、どうしても最後に、「死」という現実に向き合わなければなりません。

 私たちは人として生まれ、生きて、老い、病を抱え、やがて死を迎えるのです。

 この、「生・老・病・死」という苦悩に向き合って生きるためには、私は仏の教えに依るほかはないと思っています。

 「生・老・病・死」について、仏陀の出家の動機として伝えられている「四門出遊(しもんしゅつゆう)」の物語をご存知でしょうか。

 仏陀は、今からおよそ二千五百年前に、かつてのインドにあった釈迦族の王子として生まれました。名前を「ゴータマ・シッダールタ」といいました。

 ある日ゴータマは、家臣を連れて城外へ出かけようとします。東の門から出ると、道に一人の人がうずくまっていました。ゴータマは家臣に「あの人はどういう人なのだ」と尋ねます。家臣は「あの者は老人です」と答えます。ゴータマは、気力も体力も衰えた老人の姿にひどく動揺し、城内へ帰ってしまいました。

 また別の日、南の門より家臣を連れて城外へ出かけようとしました。するとまた、そこに人がうずくまっていました。同じように「あの人はどういう人なのだ」と尋ねると、「あの者は病人です」という答えが返ってきます。病に倒れ、悶え苦しんでいる病人に出会ったのです。ゴータマはまた心を乱され、城内に帰ってしまいました。

 さらに別の日、西の門から城外へ出ると、死者を弔う葬送の列に遭遇します。悲しみに打ちひしがれる人々の中に横たわる死者を見て、また大きく心が揺さぶられ、城内へ帰ってしまいました。

 王子としてのゴータマの生活は、老・病・死を見ることのない生活だったのではないかと思います。そのゴータマにとって初めて、老・病・死が自分の問題になったのでしょう。

 若さを誇り、健康を誇り、豊かな生活に疑問を抱かずに生きてきたゴータマは、初めて、人は誰もが必ず老い、病むこともあり、そして必ず死を迎えるという事実に直面し、深く悩むことになってしまいます。

 そんなある日、今度は北の門から城外へ出てみると、そこに静かに佇む人に出会います。同じように家臣に「あの人はどのような人なのだ」と尋ねると、家臣は「あの者は、苦悩に向き合い、その苦悩を超える道を求めて生きる人で、沙門(しゃもん)と呼ばれます」と答えます。

 清らかなまなざしをもって、道を求めて生きる沙門の姿に感動したゴータマは、自分も同じように道を求めて生きて往(ゆ)きたいと願います。人として生まれたこのいのちは、老いて、病み、そして死にゆくことから逃れることはできない。ならば、この「老・病・死」という苦しみを抱えたいのちを生きて往く道を求めたいと願ったのでしょう。

 この「四門出遊」の物語が、ゴータマの出家の動機だと語られています。

 「終活」ということを考えるとき、その根本に、誰もが老・病・死の問題を抱えていると思うのです。目の前の不安や心配事を整理し、先々の準備をしたとしても、老い、病み、死すべきこのいのちへの不安は消えることはありません。

 老・病・死を抱えたいのちをどう生きて往くのか。そのゴータマが抱えた苦悩と同じ問いを、仏の教えに尋ねてゆく。

それが「仏教の終活」ということではないでしょうか。

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