4月の掲示板のことばと住職の感想
2025.04.05
4月の掲示板のことば。
ことばは 沈黙に 光は闇に
生は 死の中にこそ あるものなれ
ル=グウィン『ゲド戦記』
住職の感想
『ゲド戦記』シリーズの1作目、「影との戦い」にある言葉です。
僕はこの物語から、子どもから大人になってゆくなかで、本当の自分というものと対峙していく、向き合っていくことの難しさを感じます。
「影」とは、多くの物語では暗喩(メタファー)として、もう一人の自分、本当の自分、というような存在として現れることが多いようです。
その「影」を受け入れることはとても難しいことですが、まさに冒険です。
「影」というと、一見マイナスなことを感じてしまいますね。暗い感じや、悪い感じや、恐ろしい感じがします。自分には、そういう部分は無いと思いたいですし、あるということを認めたくないような気もします。
でも、そこに、本当の自分がいるのかもしれません・・・。
沈黙、というと、黙っていて、静かで、声が聞こえず、言葉のないように思いますが、実は沈黙の中にこそ、聞かなければならない言葉があります。
真っ暗で、何も見えない闇の中にこそ、光を感じることができます。明るいところでは、何が光やらわからないものです。私を照らす希望や、尊さは、暗闇の自覚の中にこそ、はっきりとその存在を感じることができるのでしょう。
そして、最も恐るべき「死」が私たちに平等に訪れるからこそ、生が輝くのではないかと思います。
死は私たちにとっては、沈黙であり、闇であるかもしれませんが、でもその中に聞くべきことばがあり、希望の光を見出し、生きて往くのでしょう。